音楽のミックス作業で困りやすい要素の一つが「ヴォーカルのEQ処理」です。演奏の要の部分ですから何もしないわけにはいきませんが、弄り過ぎると不自然になりますよね。
ですから、まずは「倍音」に着目してEQ処理をしてみましょう。それができるだけでも、「良い意味で抜けた」「キレイな」声にすることが可能です。
目次
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歌をミックスするときは「倍音」が大事です
ミックスにも様々な工程がありますが、ビギナーが最もつまずきやすいのは「EQ」だと言われています。
特に困るのが「ヴォーカルのEQ処理」ですね。
ヴォーカルなのでやり過ぎると「いかにも弄ったっぽい歌」になるので、
「いっそ処理しないほうがいいかな」と感じている人もいるかもしれません。
ただ、ヴォーカルのEQ処理にはポイントがあります。
細かい話は置いておいて、とりあえずそれだけでも抑えておけばだいぶ変わります。
そのポイントは「倍音」です。
倍音を意識しながらEQ処理ができれば、「声のこもり」「『抜け』のなさ」を改善することができます。
倍音とは?
一例として、ピアノで「ド」の音を出すと、実は同時に「ミ」「ソ」「シb」の音が鳴ります。
基本的には聴き取れないんですけどね。言わば「音の隠し味」のようなものです。
この倍音ですが、ドに近い音から「第二倍音」「第三倍音」と呼びます。
この倍音を上手く操ることで、ヴォーカルの声は大きく変わります。
ちなみに、「大勢で同時に同じ音で歌う」ということをして、集中して耳を澄ますと「あ!違う音(倍音)が聞こえる!」と実感できる可能性があります。
かなりの人数と精度が必要ですが、一度試してみてはいかがでしょうか。
ヴォーカルのEQ処理で「倍音」はどうすべき?
では、具体的なEQ処理の話を。
それぞれの倍音をどう扱っていくべきなのか解説します。
第一倍音
基音(ヴォーカルが出しているつもりの音)です。
女性ヴォーカルなら400~460ヘルツ、男性ヴォーカルなら300~360ヘルツ程度の可能性が高いです。
この帯域が主張しすぎると「抜けない」感じになりやすいので、EQでカットすべきです。
2デシベルくらい下げるのがおすすめです。
第二倍音
「第一倍音の倍の帯域」に「第二倍音」があります。
つまり、女性ヴォーカルなら800~900ヘルツ、男性ヴォーカルなら600~700ヘルツくらいということ。
アナライザー等でチェックして、ここをEQで上げましょう。
上手くいくとヴォーカルの声に「抜け」が生まれるので、「良い感じで聴きやすく」なります。
1~2デシベルくらいアップさせるのがおすすめです。
「ヴォーカルが出しているつもりの音を下げて、意識できない音を上げる」というのがポイントですね。
もちろん元の歌声とかけ離れるようなことはないのでご安心ください。
第三倍音以降
第三~第四倍音くらいまでは「第一倍音とキレイに響きやすい音」なので、少しずつ上げてみるといいかもしれません。
ただ、第五倍音以降は「第一倍音とキレイに響きにくい音」なので、下げるといいかもしれません。
すると、ヴォーカルの声がより美しくなる可能性があります。
しかし、
- 第一倍音:人間が「聴こえている」と認識する音
- 第二~第四倍音:「聴こえている」と認識せずとも耳が感じ取っている音
- 第五倍音以降:「聴こえている」と認識できず、耳も感じ取りにくい音
なので、第五倍音以降は基本的にEQ処理しなくて大丈夫だと思います。
また、初心者のうちは「とりあえず第一倍音と第二倍音だけ弄る」と決めておくのも良いでしょう。
はじめて倍音の処理をする場合は極端にやってみましょう
ただ、場合によっては「この記事のとおりに処理してみたけれど、正直よく分からない……」ということもあるかもしれません。
そういったケースでは、一度極端に思いっきり処理してみるのがおすすめです。
もちろん「やり過ぎている」ので聴きやすくはなりませんが、「あ、こういうことね」と実感できるはずです。
そして徐々に調節して、上記で説明したくらいの範囲に持っていきましょう。
8キロヘルツ以上の帯域の処理は?
倍音からは離れますが、この帯域ではヴォーカルの「息の音」を調整することが可能です。
考え方は単純で、上げると「明るい音だなあ」という印象になります。
ただし、極端に上げてしまうと「歯と空気が触れる音」が入ってしまって、おかしくなる場合もあります。
ですから、「ちょっとずつ上げて、ちょうどいいところで止める」のがおすすめです。
ヴォーカルも倍音を意識したボイストレーニングをしましょう
ヴォーカルの歌自体に倍音がきちんと乗っていることも大事です(ライブでは弄れないわけですし)。
そのためにも、「鼻の中」「口の中」「声帯付近」に音を響かせることを意識してボイストレーニングに取り組みましょう。
重要なのは「喉に力を入れること」ではありません。むしろ力を抜いて「音の響き」を楽しみましょう。
力を込めれば一時的にそれなりの声量は達成するかもしれませんが、すぐに喉が潰れてしまう可能性が高いです。
まとめ
ヴォーカルのEQ処理についてでした。「とりあえず第一倍音を下げて、第二倍音を上げる」という感じですね。第三倍音以降は余裕が出てきたら触ってみましょう。また、第五倍音から先は基本的に触れなくてもいいと思います。
また、ヴォーカルの方自身も歌声に倍音を乗せるためのトレーニングに取り組むことをおすすめします。