ジョー・コッカーの生涯は波乱万丈!力強く歌う彼の人生を写真や映像で振り返りつつ、12歳のデビューから始めてウッド・ストックのライブから各地をツアーで周って挫折を経てどうやって復活に至ったか…ジョーの兄やバンド仲間、妻のパムたちから見たジョーの姿をインタビューを交えてドキュメンタリーにした映画のあらすじと感想を紹介します。
1.あらすじ~ジョーの生涯~
ジョー・コッカーがスキッフル・バンドに入ったのが12歳。
声の良さが際立つ彼は、常に大勢に囲まれて賑やかでした。
1963年にライブを始めるようになり、16歳の時には昼はガス工事の見習いとして働き、夜はパブで歌う日々を送ります。
1966年にはクリスを引き抜いてバンドに入れるのですが、その際にジョーは「裏表のない誠実な男」だと言われていました。
最高のプロデューサーであるデニー・コーデルに素晴らしいスタジオを用意してもらい、ピアノの上にマイクを置くことで音質を良くしつつ録音をしていき43回の収録を経て『マジョリーン』が完成。素敵な声を響かせる中、コーラスと合わせつつもシャウトして盛り上げる『ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンズ』を経て、新聞には「コッカー衝撃」と書かれるほどの人気を得ました。そうして多額をかけたオファーによって英国進出を果たし、ファンには追っかけも表れるほどになったのです。
1969年にはウッド・ストックフェスに出てかなりの人数の前でライブを行うことに…この頃からジョーと仲間たちは幻覚剤の作用もある麻薬を使用するようになる中、英国ツアーが終了。マネージャーのディーはその後すぐに米国ツアーを決定したため、バンド仲間と共に慌ただしく活動を続けるのでした。
ある時、レオン・ラッセルと共同プロデュースをするようになり、『デルタ・レディ』を作った後に一流のメンバーが集めて各地でライブを開催。多数のミュージシャンと共に、サーカスのような雰囲気で一体感のあるライブを続けますが、レオンはリーダーの素質を備えていてジョーの存在が少し薄れるように…ジョーがドラッグを常用したことも影響して不安定になっていき、ツアーのラストの方では険悪な雰囲気もありました。
周りから愛される存在から、不愛想な者になったジョーは「売れなくなっただけ」と業界からは言われるようになります。最後のステージから3年を経て、復活ライブを開催しますが、なんとジョーは歌わずにライブが終了…悲劇的な結果に関係者からは憐れむ声も上がりました。
ジョーは「酒と麻薬に溺れた」と報じられ、1977年にマネージャーのマイケル・ラングが彼を立ち直させるようになります。売人が周りに多かったジョーは借金もあって浮き沈みの激しい状態になっていましたが、品行方正なバンドを組んで新たな仲間と再スタート。そして、1978年にパムと出会って付き合い始め、落ち着いている大人な彼女はジョーの支えになるのでした。
1988年にウッド・ストックの記念イベントでベルリンの壁の近くでコンサートを行い、その成功がジョーの基盤となります。マネージャーはツアー中に彼の節度を守らせて食事にも気を遣いつつも1年をかけて170公演をする世界ツアーを行い、2013年にもサイドツアーをしたのが最後になりました。その間に英国女王のためのライブや過去の曲の編曲等を経て、9月に末期の小細胞肺ガンだと判明。12月22日にジョーは亡くなりました。
2.感想・見どころ
・写真や映像と共に語られる序盤
出典:youtube.com
ドキュメンタリー映画ということで、ジョーのデビュー前は写真で主に語られ、彼の兄や昔からのバンド仲間が当時のジョーの姿を話すのが序盤。白黒写真での姿は笑って映っている純粋そうな人柄が伝わっていましたね。
記念すべきウッド・ストックのライブは映像と共に紹介があり、ライブ時の様子も流れる中で特徴的なのは手の動き!エアギターのようにも見える手の動きと、拳を握る様からは「感情で歌う」という姿が良く現れていました。彼を知る者から「力強く歌う、くしゃくしゃの髪の英国人」「集中していつも全力」、「150%で歌う」と言われるほどの力強さが良く伝わってくるシーンです。終盤での映像では1.6万人の観客と共に行われたケルン公演のライブが壮大だったのが印象的です。
・ジョーの挫折
自分の意見をしっかり持ちつつも、チャーミングなジョー・コッカー。1度目の挫折は予算を使い切ったツアーにジョーが全財産を投入したことから始まります。彼が家に戻った際には力尽きたような見た目で、その後もドラッグを続けたとのことですが「純粋な彼は渡されるがままクスリを服用した」とのことで何とも言えない気持ちになりましたね。
その後もライブに失敗して落ち目となるジョーの姿は切なさを感じさせ、全盛期を懐かしむように『ユー・アー・ソー・ビューティフル』が流れる一連のシーン…ミュージシャンならではの挫折がひしひしと伝わってきました。
・ジョーの復活と歌の良さ
復活のキッカケになるアルコールとの戦いも印象的。終盤時にお酒を断ち切るための努力を続けて「自分でなんとかできる」とジョーは言いましたが、それでも挫折しそうになるのです。しかし、生まれ変わるために本気で断酒に成功!そうして昔のようにシャウトもできるようになった彼は『ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンズ』を再度歌うことに!
イギリス女王のためのライブではアドレナリンの力で歌いきることができ、国から授与された賞と共に写真に写る姿が印象的でしたね。
3.まとめ
ジョー・コッカーの波乱万丈な歌手人生に驚くドキュメンタリー映画でした。処々に当時の写真や映像が紹介されるので、ジョーの姿の変遷も見れるのですが最後の方の映像では見た目は変わっても力強く響かせる声が健在だったのが印象的でしたね。マネージャーやバンド仲間のインタビューでは「ジョーが好きだったんだな」という思いが伝わって来て、特に妻のパムがジョーを語るシーンが楽しそう…歌手としても愛されたジョーの生涯、そして歌声を響かせる彼の裏話などがよく伝えられている作品です。