エミネムの人生をベースにした半自叙伝の映画『8 Mile』は彼自身が主役を務め、ラップを披露!フリースタイルのラップ・バトルは相手の弱点を言葉で攻撃するボクシングのようであり、観客の勢いと共に盛り上がるステージが見ものですよ。デトロイトと8マイル、黒人と白人の境界線に関するストーリーも考えさせられる今作の、あらすじと感想や見どころを紹介しましょう。
目次
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1.あらすじ
”シェルター”で行われるラップバトル。黒人がステージに立つ中で、白人のラビットは一言も喋れずに終えてしまいました。彼は恋人のジャニーンと別れたばかりで、母の元に戻って居候をさせてもらうのですが母の恋人とは折が合わず…幼い妹のリリーを気に掛けつつも過ごすことになります。
工場で働きながら仲間と行動を共にし、時にはペイント弾でパトカーを撃ったりも…パパ・ドッグ率いるリーダーズ・オブ・フリーワールドのメンバーに煽られてケンカになったりする中、ラビットはアレックスと出会いました。彼女に惹かれ、身体の関係も持つ中でモデルになってニューヨークへ行きたいと聞いてラビットは自身の夢について考えます。
友人のウインクはラジオ局にコネがあることからラビットを紹介すると言っていましたが、ラップ仲間はウインクの話を信用できずにいました。ウインクはパパ・ドッグともつるんでいたためそれを発見した際にケンカに発展。仲間のチェダーが銃を持ち出しますが自分に誤射したことでケガを負います。
お金が無くて親の元で暮らしているメンバーが、有名になったらどうするかと夢見がちな言動ばかりすることから呆れるラビット…その後、仲間とケンカをし、母の恋人が出ていったことで「お前のせいだ!」と罵声を浴びせられて孤立すしてしまいます。後が無いラビットはウインクがJLBに会わせるという話に乗ってスタジオへ。しかし、そこにはインタビューを受ける他の者がいるだけでなく、ウインクはカメラマンを紹介するとアレックスに伝えてそのまま身体の関係を持っていたのです。ラビットはウインクを殴って出てきますが、彼は仲間を引き連れて仕返しに来てボコボコにされました。
工場での仕事を続けて残業を頼まれるまで信頼を得たその日、ラップバトルの当日だったことでアレックスがバトルに参戦しないのかと話をしに来ます。前回のリベンジを果たすため、ラビットは決意を固めて会場へ。仲間と和解して応援される中、バトルに参加し初戦から勝ち上がってパパ・ドッグとの決勝戦が行われるのです。ラビットは先行でラップを歌いきって、パパ・ドッグは返すことができず、ラビットの優勝でラップ・バトルを終え、仲間たちは喜ぶのでした。
2.感想・見どころ
・ラップのシーンが見どころ!
BGMのラップがクールな冒頭!ラップバトルの会場はDJが音楽を流し、ラップバトルを仕切る司会が観客を煽る中で、パパ・ドッグたちのラップのシーンも良かった!しかし、ステージで一言も発することができずに終わってしまうラビット…その後、家への不満をラップにして歌う楽しげな姿があったり、働いている工場でのシーンも印象的でしたね。
黒人も多くて少ない給料や美味しくない昼食に不満を持った者たちが、昼休みにラップで愚痴を歌にする人もいて、ラビットもラップバトルに参加して周りから好評を得る…最初のシーンで歌えなかった姿がウソのようラビットのラップは続き、ラストのパパ・ドッグとのバトルもすごかった!
初戦はリケティとのフリースタイルのバトルが45秒ずつ行われ、ラビットは前回、一言も喋れなかったことや「白の仲間はバニラアイス」だと煽られて選手交代。それでもラビットは負けずに「男とは名ばかりの女の集団」と言ってリケティの名前と暴言をかけて韻を踏んで見事に返しました。その後も熱いラップとリリックの戦いを経て決勝戦が始まります。
パパ・ドッグとのバトルは新しく90秒で戦うというルールが加わって、ラビットが先行。「罵る言葉にセンスが無い、パパ・ドッグは上品な学校卒業だって?ギャングスタの名が笑う。ホワイト・トラッシュで文句があるか?」と英語で韻を踏んでリズムよく言い立てる!この語感の良さは聞いてこそ味わえるものでしたね。対するパパ・ドッグは観客たちが手を挙げ煽る中、無言で数十秒…マイクを返して負けを認めて終わったあとの会場の盛り上がりも印象的です。
・ラビットのストーリーに引き込まれる映画
ジミーはラビットというあだ名で呼ばれており、母が「小さい頃に前歯が出てて耳が大きかったことからラビットと呼ぶようになった」と言っていたのが意外でしたね。デトロイトで黒人たちがラップバトルしている中、白人のラビットが出てくるとそれだけでブーイングが…それでも仲間に支えられ、ラップを披露すれば皆から歓声を浴びる。それを経て自身の歩む道を決めていくラビットの人生が描かれていたストーリーでした。
ラビットがヘッドホンを付けると喧騒が消えて音楽が流れ、バスから見える街の店を眺めては使い込まれた紙にメモをしていくシーンが演出として特に良いと感じましたね。
3.まとめ
各場面で繰り広げられる言葉巧みで強烈なラップ!ラップに込めた熱い思いがラビットから伝わってきた『8 Mile』は、シーンごとに流れるBGMも良かったですね。エミネム自身が演じた主人公のラビットの姿はラップの凄さはもちろん、演技の迫力も十分でした。
ラップ・バトルの言葉の応戦は一方的な罵りだけでなく、観客を沸かせるセンスも感じさせて、最後には相手と握手して終えるという礼儀もある…スポーツのような清々しさもあったのが印象的。一人の人生を左右した物語に考えさせられ、デトロイトや人種について学ぶことも多い映画でした。